増えすぎたエゾシカ
エゾシカはその名の通り、世界でも北海道にしか生息していない野生生物。明治初期の乱獲や大雪などの影響により、一時は絕滅寸前まで激減しました。しかしその後の保護政策により、ここ30年ほどでエゾシカが急増。現在は道内全体で推定60万頭以上が生息しているといわれています。
※現在(H28)の推定生息数は45万頭 捕獲数は11.9万頭
農業被害は39.2億円(H28)39.2億円は道民が負担。
※北海道庁環境生活部 環境局生物多様性保全課 資料参照
公益社団法人 札幌消費者協会「北海道エゾシカ倶楽部」資料参照
エゾシカが急増した理由
1.天敵であるエゾオオカミが絶滅したこと
2.原生林が農地に変わって新しいえさ場となったこと
3.ハンターの数が減っていること
エゾシカによる被害
○強度の採食や踏み付けによる生態系への影響などが深刻な問題となっている
○畑の作物や植林の木の芽や樹皮を食い荒らすため農林業の被害が拡大
○自動車や列車とエゾシカの衝突事故が増えた
このように、私たち人間の暮らしへの影響も少なくありません。
北海道で生息してきたエゾシカは、先住民族アイヌの人々にとって大切な動物でした。そのお肉は貴重な食材として、毛皮や皮革は衣類としてムダなく利用。アイヌ語のシカ=「ユク」に「獲物」という意味があることからも、暮らしに密着した自然の資源として親しまれていたことがうかがえます。こうした先人の知恵には、今、私たちが直面するエゾシカによる問題を解決するためのヒントがあります。増えすぎたエゾシカについて、節度をもって捕獲し、数を適正に管理しながら自然の資源として有効活用すること。それが北海道の自然や生態系バランスを守るとともに、私たちの暮らしに新たな恵みをもたらすことにつながります。
エゾシカ捕獲の現状
エゾシカの捕獲頭数は年間約12万5千頭(2015年資料)。この内、食肉に利用されるのは17.6%で残りは廃棄されています。世界で皮を棄てているのは日本だけとか。
解体処理場は約60か所位あると言われていますが、適性に稼働しているのは約3割といわれ、あとは老朽化している施設が多いのが現状です。
ハンターは、10年前で登録者数2万人いましたが、ここ数年は9,000人程度。大半は65歳以上、しかも実質稼働率は6割にとどまります。猟銃価格は30万~100万円と高価なうえ、年間維持費は20万円。
駆除されたエゾシカの行く末
北海道ではエゾシカの有害駆除が実施されていますが、駆除された鹿の利活用については、鹿肉以外に未だ有効な方法が見つかっていないのが現状です。特にエゾシカの皮・骨は、ほぼ利用されず、産廃物として焼却処分されています。これに伴う焼却費用の発生、環境汚染の誘発も懸念されており、各自治体を悩ませています。